東京都墨田区では、毎年一般公募で集められた5000人が両国国技館で第九を合唱するというイベントを行っています。
「国技館5000人の第九コンサート」と聞けばピンと来る人もいるのではないでしょうか。次の開催は2019年2月なんですが、本番に向けた初心者用の練習会が先日開催されたので参加してきました!
この記事では、簡単に国技館第九コンサートの歴史に触れてから、練習会の様子をレポートします。
国技館5000人の第九コンサートとは
国技館5000人の第九コンサートってそもそも何でしょう。「国技館」という冠が付くことからも分かるように、これは国技館の歴史に由来したイベントです。
ご存知の方も多いと思いますが、両国国技館は一度取り壊されており、現在の国技館は2代目となります。
戦後間もない1946年、初代の旧国技館は進駐軍によって接収されてしまい、国技たる相撲の興行が禁止されました。大相撲協会は台東区蔵前に蔵前国技館を建設して興行を続けましたが、両国に残された旧国技館はメモリアルホールと改称されてしまい、ボクシングやプロレスの会場として使われるようになりました。
1952年には接収が解除されましたが、既に蔵前国技館を稼働している大相撲協会はメモリアルホール(旧国技館)を売却します。メモリアルホールはその後の権利移転で国際スタジアムや日本大学講堂などに姿を変えましたが、老朽化に伴い1983年に解体されその幕を閉じました。
そして、翌年の1984年には蔵前国技館のほうも老朽化により閉館されたことから、国技館を再び両国に建設することが決まり、竣工されたのが現在の2代目両国国技館です。
墨田区は、国技館の帰還を祝って区民で何かイベントをしようと考えました。そこで採用されたのが「ベートーヴェン交響曲第9番をみんなで大合唱しよう!」というアイデアです。(この頃は全国からの公募ではなく墨田区民のみのイベントでした)
イベント実現の為に、1984年4月24日には「国技館すみだ第九を歌う会」が発足されます。同年の11月30日には新国技館が無事に竣工され、翌年の1985年2月17日に記念すべき第1回目の公演が行われました。この初回公演のみ「おかえりなさい国技館」というサブタイトルが付いていたようです。
僕も今回記事を書くにあたり調べてみて初めて知ったんですが、あの国技館の過去にはこんなドラマがあったなんて面白いですね。国技館5000人の第九コンサートは、来年2019年の開催で35周年となります。そんな歴史を感じながら歌ってみるとまた感慨深いものを感じるかもしれません。
嫁さんと2人で練習会に参加
「国技館すみだ第九を歌う会」は毎年2月に5000人コンサートを開催します。本番の一般公募がされるのは前年の7月くらいですかね。さらに、2012年頃からは初心者を対象とした練習会も開かれるようになりました。
その練習会に、僕と嫁さんの2人で参加してきました。2人とも第九を歌った経験はもちろん、合唱経験もないズブズブのド素人です。第九自体は2人とも好きで、僕は学生時代に通学中に聴いてたりもしました。
以前から国技館コンサートには興味があり「いつかあそこで歌ってみたいね~」なんて言ってたんですがなかなか実現できずに数年。申し込もうと思ってるうちに募集期間が終わっちゃった時もあれば、同時期に開催される東京マラソンを優先させた時もあり、なかなかタイミングが合わず機会に恵まれませんでした。
そんな中、なんと今年は嫁さんが練習会の公募を発見!
ササッと申し込んでくれて、無事にコンサートへの第一歩を踏み出すことができました!
練習会について
スケジュール
2018年の1回目の練習会は6月10日(日)でした。7月末までの計6回、土日を使って段階的にドイツ語の歌詞の発音やパート分けされた合唱を学んでいきます。
回 | 日付 | 練習内容 |
---|---|---|
1 | 6月10日(日) | 543〜590小節の発音練習と譜読み |
2 | 6月17日(日) | 前回の復習に加え、さらに257〜264小節の発音練習を兼ねてパート分けしてハモってみる |
3 | 6月30日(土) | 前回の復習に加え、さらに285〜292小節の発音と譜読み |
4 | 7月8日(日) | 313〜330、411、595〜610小節の発音と譜読み |
5 | 7月14日(土) | 前回の復習に加え、627小節〜最後までの発音と譜読み |
6 | 7月21日(土) | 総合復習 |
練習会場
練習会場は墨田区役所がある「すみだリバーサイドホール」の2階です。最寄駅は浅草駅か本所吾妻橋駅です。
<住所>
〒130-8640
東京都墨田区吾妻橋一丁目23番20号
すみだリバーサイドホール
<電話番号>
03-5608-6430
浅草駅から向かう場合は隅田川を渡って徒歩7分くらいです。
本所吾妻橋駅からであれば徒歩5分くらいです。僕たちはこっちの経路を使いました。
1階が区役所なので分かりやすいと思います。赤いオブジェの奥に入口があります。
エスカレーターで2階に上がって左に曲がればすぐに受付があります。
受付けを済ませると、こんなしおりを渡されました。
中には今後6回のカリキュラムと、歌詞付きの譜面が書かれています。
あと前回(2018年2月開催回)のコンサートのパンフレットも一緒にもらいました。中を見てみると、参加者全員の名前を載せてくれてる!これは思い出に残るし嬉しいですね。
これらを持って会場に入ります。中に入ってみるとこんな感じで学校の体育館のようでした。
椅子によってパート分けがされているようで、左からアルト(女性低音)、バス(男性低音)、テノール(男性高音)、ソプラノ(女性高音)の川になっているようです。ただし今回は初日でドイツ語の発音をメインにした練習なので、特に意識せずに座っても良いとのことでした。
第1回目の練習 2018年6月10日(日)
練習は毎回2時間コースなんですが、この日は会場予約の都合上、15分短くなりました。
まずは第九を歌う会の田中会長の挨拶に始まり、続けて講師を担当してくださる和田先生の挨拶が続きます。流石にどちらもスピーチ慣れしてますね。随所にジョークを挟んでリラックスした雰囲気を作ってくれます。
初心者練習会を開くようになったのは今から6年前。当時は100人ほどしか参加者がいなかったようですが、年々増えてきて今年は571人という大盛況ぶりです。そのうち270人が完全な未経験者、ここに僕たち2人も含まれますね。
「第九は難しいので1年で簡単に歌えるようになるものでもないですし、歌えるところを歌って楽しんでください」とのお言葉でした。
発声練習
続いて発声練習。ここから全員起立して腹式呼吸で声を出していきます。
当日は気温22度くらいだったんですが、かなり暑かったですね。低音から高音へ上がっていくにつれて汗の量も増えてきます。次回は扇子でも持ってった方が良さそうです。
ここまでで大体30分くらいです。
ドイツ語の発音
残りの1時間15分、休憩も含めると1時間くらいでしょうか。いよいよここからドイツ語の発音練習です。
先生に最初に言われたことは「まずは歌詞を見ないでください」でした。
譜面にはドイツ語の歌詞がカタカナで書かれてあるんですが、文字を目で追って発音するのではなく、先生の口や表情を見ながらモノマネするイメージで復唱してほしいとのことです。「文字」を読んで理屈で覚えるのではなく「言葉」として感覚で覚える練習をするってことですね。学校の英語の授業とはちょっと違いますが、個人的にはこの方が実戦形式で学べるので好きです。
先生はドイツ語特有の巻き舌であったり、上の歯で下唇を噛む「W」の発音であったり、ウムラウト(口をオの形でエを発音、ウのままイを発音など)などを1単語ずつ丁寧に少しずつ教えてくれました。この発音の練習時間は大体30分くらいだったでしょうか。
最後に「じゃあ一回通しで全部言ってみましょう」ということで形になってきたのがこんな感じです。
ここまで出来るようになって、ようやくピアノの先生の登場です。このあと初めて歌詞付きの譜面を開き、ピアノの伴奏を聴きながら譜面を目で追って歌詞とメロディーを頭に入れていく作業に入りました。2回ほど流したところで一旦休憩です。
休憩
休憩時間はたぶん10分くらいでした。ちょうど会場を出たところで完全版の楽譜を買うことができます。受付けで配られた紙は一部の譜面しか載っていないので、妻のと合わせて2冊買っておきました。
ドイツ語の発音(伴奏つき)
練習会の後半戦です。休憩前は先生に続いて発音するだけでしたが、ここからは歌詞を目で追いながら自ら朗読していきます。
先ほど買った楽譜の歌詞にはカタカナ表記はありませんが、先生のおかげで習ったところについては比較的スラスラ読める程度にはなりました。ただ、発音がまだ慣れないですね。この「ブ」はBなのかWなのか、巻き舌した方が良いのか違うのかなど、細かいところは今後の反復練習でカバーしていく必要がありそうです。
最後に2度ほど伴奏に乗せながら歌詞を朗読して終わりです。経験者の方は各自のパートで歌ってみてくださいという形でした。この日1日の成果がこれです。
全体的にたどたどしいですが、何の予備知識もない1時間前と比べればどうにかこうにかフラフラ立ちしてそうな感じですね。次回は各パートごとに分かれて練習をするので、希望するパートの席に座るようアナウンスがされてからこの日の練習は終了しました。
第2回目の練習 2018年6月17日(日)
前回の練習から1週間空きました。この1週間の間に、僕も妻も先ほどの動画で発音をひたすら練習しましたので、2人とも暗記してソプラノパートを歌えるくらいにはなれました。
今回の練習から、各パートに分かれてメロディを学んでいきます。僕は本当はソプラノが良いんですけど(裏声で何とか出せる範囲だというのと、単純にソプラノのメロディーが好きので)残念ながら男性の席はなさそうなのでテノールにしました。
発声練習
前回同様に、まずは発声練習からです。腹式呼吸で声を頭から抜かすように発生します。時間にして10分くらい、低音から高音まで徐々に慣らしていきました。
ドイツ語発音と譜読みの復習
続いて、前回の復習として543〜590小節のドイツ語を全員で発声していきました。おそらく他の参加者の方々もご自宅で練習されてきたのでしょう、前回よりも堂々と声を出してる人が多かった印象です。そのまま譜読みに入り、全員でソプラノパートを歌いましたが、やはりこれも皆さん問題なく歌えていたように思えます。
パート分け(テノール)
さあ、いよいよここからパート分けです。男性はバスとテノールが半々くらいに分かれてるようですが、女性はアルトとソプラノが6:4くらいでソプラノがやや少なめです。ソプラノはキーが高いので敬遠されやすいようですね。ちなみに昨年の一般公募はアルトに応募が殺到してしまい、先行してアルトだけ募集が締め切られてしまったようです。今後アルトを狙う方は早めに申し込みをしましょう。
まずは257〜264小節の音階を教わりました。ここの発音は既に習った559〜574小節と同じですが、559〜574は6/8拍子なのに対し、257〜264は4/4拍子なのでテンポの違いを意識しながら歌ってくださいとのことでした。また、テノールだけは音階が他のパートと少し違い、部分的に1オクターブ上がったり下がったりするところがありました。
これを3回ほど歌ったところで一旦休憩です。
休憩後は543〜590小節の練習に入りました。アルト、バス、テノール、ソプラノとそれぞれ音階が全く異なるので、順番にピアノの伴奏に合わせながら各パートごとに歌っていきます。初心者の僕からしてみると、ソプラノ以外は全く聴いたことがないので初めは違和感がありましたが、何回か歌ってると慣れてくるもんですね。
各パートごとの練習を終え、最後に全パート合わせての合唱を2回ほど行ってこの日の練習は終わりました。
まだ譜面を追うのに必死で他のパートやピアノの音をじっくり聴く余裕がありませんが、次回までの宿題としてテノールの音階をしっかり覚えて落ち着いてこなせるようになってくるとまた面白さが増してきそうです。
第3回目の練習 2018年6月30日(土)
参加後に追記予定
第4回目の練習 2018年7月8日(日)
参加後に追記予定
第5回目の練習 2018年7月14日(土)
参加後に追記予定
第6回目の練習 2018年7月21日(土)
参加後に追記予定
コンサートへの参加を考えている初心者の方へ
僕たち夫婦も全くの初心者ですが、練習会に参加することで楽しく第九を学べています。
参加費用は全6回で1人2000円です。2018年の練習会は2月26日に募集開始されて5月9日に締め切られたので、毎年このくらいの時期に公募されるのかもしれません。来年以降の参加を狙ってる方は3月頃に公式サイトを見てみてください。
第九を歌うには、まずドイツ語の発音を身に付け、次に自分が担当するパートの音階を正確に把握することが重要です。発音については、当記事で掲載している練習風景の動画を繰り返し聴きながらひたすら復唱して頂ければ習得できます。私も妻も通勤中にひたすら繰り返し聴き続けてるだけで発音できるようになりました(笑)
無事に発音を覚えたら、歌詞を譜面で追いながら実際に歌っていく練習です。歌詞付きの譜面と各パート用の練習CDを使うと練習が大変捗りますので、まだお持ちでない方はぜひご用意することをオススメします。僕たちは練習会場で割高に買ってしまいましたが、市販のもので充分です。
歌詞付き譜面
アルト練習用CD
ソプラノ練習用CD
バス練習用CD
テノール練習用CD
僕たちはまだ練習会にしか参加できていませんが「音を楽しむ」という言葉の通り本当に楽しい時間を過ごすことができています。今から本番が楽しみで仕方ありません!第九に興味ある方、参加しようか迷っている方、絶対楽しいので是非参加してみください!
本番の募集開始は7月予定ですので、詳細が告知されたらまたこのブログでもご紹介します。